2021.03.13(土)

Hot Chocolate


目次

制作にあたって


 昨年の2月からYouTubeにてアニメやゲームの楽曲のピアノアレンジを投稿していますが、今回はSpitfire Audioの無料ピアノ音源「LABS: Soft Piano」を試してみたいと思い、「ココアを飲んでひとやすみ」をテーマに作曲をしてみました。この音源はその名の通り、柔らかくて優しい音がしますね。この優しい音にぴったりな曲ができたのではないかと思っています。この曲は半年くらい前にTwitterで公開した下の動画のフレーズを展開させるという形で作りました。

 上の動画の短い曲は、MedlyというiOSアプリを試してみようと思って作ったものです。このアプリの無料音源はEDMを作るのに向いているので、アレンジはそれっぽくなっています。ですが私はこのようなエレクトリックなジャンルの曲には明るくないので曲調はEDMっぽくないかも……? 逆に今回の「Hot Chocolate」のようなジャンルの曲には合うメロディになったかなと思います。ちなみに、上のツイートの曲を作ってから気づいたのですが、azusaさんの『i Love』サビ部分「初めてのキモチよ」のメロディと一致するのですよね……笑 やはりアマガミ関連の曲を聴くことが多いので、無意識のうちに影響を受けていたのでしょう。

構成


 実は構成については、細かいことは考えていませんでした……笑 考えていたとしても、静かに始まって徐々に盛り上がり、最後は静かに終わろうという大雑把な流れだけです。構成を書き出すと次のようになります。

 

A - A′ - B - A″ - A


 まず、高音で静かに始まるA(8小節)で主題を提示し、A′(8小節)ではその主題を繰り返し、印象づけます。ここで低音や音数が増えることによって「始まった感」を演出していますが、いかがでしょう。B(10小節)ではまた別のメロディを登場させ、展開に広がりを持たせています。そしてA″(8小節)で再び主題を登場させることで説得力を持たせ、最後のA(9小節)で最初のAと対になるように、静かに終わります。

 

 次に調性についてですが、個人的に冬の冷たい空気感の中に、心理的な温かみが感じられるト長調(G major)を選択しました。また、装飾音が付けやすいことや、最初の順次上行(ソラシドレ〜♪)でシャープ系のキーの、フラット系よりもキラキラする感じを引き立たせたいという理由もあります。これは個人的な感じ方に過ぎませんが……。また、転調は行なっていません。今回はBGMとして聴くことを想定しているので、転調するとちょっとびっくりするかなと思ったからです。これも個人の感想ですが、転調するとココアの味が変わってしまうような気がします笑

セクションごとの解説


1~8小節目(A)


 先ほども触れましたが、この曲は「ソラシドレ〜♪」と順々に上っていくような始まり方にしました。徐々に明るく、広がっていく感じがしませんか? とても単純ですが、大好きな旋律の動きです。

 このセクションは「穏やかに」を意識したので、ベースもCから半音または全音でGまで下がっていくという穏やかな動きにしました。さらに、トップノートの動きもこだわりました。トップノートとはコードの一番高い音のことですが、ここでは「シーラーラーソー、ソーファ♯ー♪」のように徐々に下がっていくようになっています。ルートが順々に下がっていくから当たり前なのですが、ルートを固定してトップノートだけ下げたりもしているので、ここにも注目してそれぞれの響きの個性を楽しんでもらえると嬉しいです!

 コード進行についてですが、4小節目で「G→G7」のようになっています。Gはキーの主音がルートの和音(主和音、トニック)なので安定感、着地感がありますね。この着地感とともにメロディも一段落ということになります。そして次の「ソラシドレ〜♪」に繋がるのですが、ここでG7というコードが登場します。これはGというコードにルートからの短7度上の音が付け足されただけのコードですが、先ほどのGの安定感から打って変わって緊張感が生まれます。このG7はセカンダリードミナントといいますが、セカンダリードミナントは他にも数種類あってその中のひとつです。特にキーの主音がルートになっているセカンダリードミナントは、絵の具が水に濡れて紙に滲み出すような感覚があって好きです。アマガミの「Epilogue〜HAPPY END〜」にも登場します(下譜)。

 ほぼ同じフレーズを繰り返すことになるので、2回目はコード進行を変えるという形で変化を持たせました。今度は「C→Cm」となっていますが、トップノートではなく「ミーミ♭ー♪」のように第3音を動かしています。先程のトップノート(第7音)を動かした時に比べて、感情が揺さぶられるような感じがしませんか?

 5、6小節目のメロディは1、2小節目のメロディとほぼ同じですが、「ソファ♯ソー♪」を1オクターブ高くしました。高音がよく響いて綺麗ですよね。よくある技法ですが、この後に低音を入れることによってギャップが生まれ、さらにこの高音が映えますね。なので7小節目で初めてヘ音記号が登場します。ちなみにこの高音の部分は澄んだ響きにしたかったので、Gm/B♭という3和音にしています(1回目ではB♭dim7という4和音でした)。このGm/B♭はGmやEm7(♭5)を鳴らしたいけど、少し欲張ってベースは動きが滑らかになるようにB♭を鳴らしたいという願いを叶えてくれます。コードのメジャー/マイナーを決定づける3rdの音ががベースになるので、彩度が高い響きが生まれます。

 その後は「Am7→C/D→G」となり、ベースが4度で動きますが、D7ではなくC/Dとすることにより、穏やかさを残しています。Am7はルートを省くとCと同じになりますね。つまりCをキープしたままベースだけ動かしているので穏やかな印象の響きになります。

9~16小節目(A′)


 今まではサビから始まる曲みたいなイメージでしたが、ここからは「Aメロが始まった」ようなイメージです。とはいえ、全く別のメロディが登場するのではなく、主題のメロディやそれを感じさせるメロディになっています。

 冒頭のストレートさから一転して、おしゃれ感を出すために半音の動きが多くなります。まず、10小節目1拍目裏から和音ごと半音ずつ下に平行移動しています。和音ごと移動すると、響きが複雑になっておしゃれ感が出ませんか?笑 次に、10小節目4拍目からの左手の「シシ♭ラー♪」です。これを①とします。さらに、11小節目3拍目裏からの左手の「ララ♯シー♪」です。これを②とします。すると、①と②を組み合わせて、「シシ♭ラー、ララ♯シー♪」という鏡写しの動きになって綺麗だと思いませんか?(圧力) さらに、それぞれの部分の右手の動きを見ると、①のとき「シドシ♪」、②のとき「レミレ♪」となります。どちらも「2度上がって2度下がる」という動きになっています。これらを踏まえると、この①と②が対になっているということがお分かりになっていただけるかと思います。偶然です()


 こちらもベースの動きにこだわっています。アプローチノートとかいうみたいです。代表的なおしゃれ技法のひとつって感じがして、多用しがちです笑 私がこれを初めて知ったのは、「残酷な天使のテーゼ」のBメロ「その背中には」の直後です。


 次のコードのルートに向かって直前のコードの5thから半音で近づいていきます。めちゃめちゃエモいので聴いてみてくださいね。これと同じようなことを14小節目で取り入れてみました。余談ですが、実は私はエヴァンゲリオンをちゃんと観たことがないです。7、8年くらい前に友人からの依頼でこの曲の採譜をしたことがあるので曲だけはめちゃめちゃ聴いていました。ちなみにその後楽譜を友人に渡したのですがなぜか「これドラムのスコアでしょ」って言われて演奏拒否されました笑

 話を戻します……14小節目の左手が「ファ♯ファミー♪」と動くところの右手は「ソファ♯ソー♪」となっています。これらのうち前の2音は短9度で重なっています。短9度はオクターブと半音の音程なので、単体で聴いたらぶつかるような感じがしてゾッとしますが、流れの中で聴くと適度な緊張感が生まれるので、その効果を発揮するような気がします。10小節目にも同じ短9度の関係はありますが、他の音に紛れて不協和音感は薄れていると思います。

 コード進行についてですが、14小節目でBm7からEm7に進んだ後、直ちにE7に変えています。ちょっと不意をついてみたつもりなのですが、いかがでしょうか。Em7の3rd(ソ)を半音上げてソ♯(E7)にし、Am7のルート(ラ)にスムーズに繋がるようにしています。そして16小節目ではよくある「Ⅰsus4→Ⅰ」の形で解決を遅らせ、それとほぼ同時に(3拍目から)次のフレーズが始まります。

 アレンジ的には、16小節目では動きが左手から右手に流れるようなイメージです。次のセクションではこのような流れるような動きが他にも登場します。

 次のフレーズは「レドシラ♪」と入って、17小節目の「ソ♪」に繋がるのですが、実はこれはAセクションの入り方である「ソラシドレ♪」の逆再生になっています。ちょっとした遊び心です。

17~26小節目(B)


 ここでやっと全く別のメロディが登場します。最初は素直にツーファイブワンで、18小節目にも先程のような低音から高音へと流れるような動きを作っています。ツーファイブで自転車を漕いで勢いがついてきたところで、ワンで脚を休めて惰力だけで進んでいるようなイメージです。

 19小節目から、もう一度同じフレーズを繰り返すのですが、今度からは平行短調に転調するようなイメージで「Am7→Bm7」と順次進行します。ちょっと陰りが見えるような感じがします。「(嫌なことも含めて)今日もいろいろあったなぁ」と思い出しているイメージです。でもこのままだと負の感情で終わってしまうので「でも!」とその流れを断ち切るように「Dm7/F」を入れました。ベースが増4度進行(オクターブの中で最も離れた音)するので、ちょっとびっくりします。Em7でもよかったのですが、これだと落ち着いてしまうということで、Dm7/Fでふわっとさせました。そしてE7(♭9)でやっと「大丈夫!」って感じです笑 「大丈夫!」なのでメジャーコードで明るい響きにしています。


 21小節目も「Ⅱm7→Ⅳm7」というコード進行を使っています。これは「アマガミOpening Title」(下譜)に使われています。ノンダイアトニックコードであるⅣm7がいい雰囲気を醸し出していますよね。このⅣm7は「サブドミナントマイナー」として、さまよい日記No.7でも触れているのでよかったらご覧ください! サブドミナントマイナーによって同主短調(Gマイナーキー)に一時的に転調しています。短調と言っても一時的なので、真っ暗絶望というわけではなく、ほんのり暗くちょっぴり切なくと言った感じがするのでエモエモですね。


 その後はよくある強進行(4度上に進行)を繰り返すパターンです。メロディは6度のハーモニーで安定感、安心感を出しています。さらに、Bm7とEm7が鳴るときのメロディはルートから数えて3度の音程にあるので、柔らかくて優しい印象があります。そして再び低音から高音に流れるような動きを作り、D7(♭9)というコードでこのセクションはおしまいです。♭9thの音はルートと半音の関係なので、個人的に「ちょっと不器用で可愛らしい」イメージがあります。次のフレーズに入る前にオクターブで「レレ↑♪」という音を入れています。これは夜空の星がきらりと瞬いたイメージです。雰囲気を引き締めて、セクションの区切りを明確にする目的もあります。

27~34小節目(A″)


 再びAセクションのメロディが登場します。そして先ほどと同じように強進行のパターンが登場します。好きですね……笑 左手のリズムはギターの伴奏っぽいのをイメージしています。29小節目では再びD7(♭9)を登場させていますが、これはAm7からの「ミ→ミ♭→レ」という流れを作るためです。このような半音の動きは30小節目でも作っています。

 30小節目の最後はBlackadderChord(「イキスギコード」とも)を使っています。素直に行けば直前のDm(ベースは一旦無視します)からG(この後BlackadderChord化するところ)→Cというように進行しますが、ベースをCに向かって半音でスムーズに動かしたいということでレ♭にします。ここで「次のCのミの音にスムーズに繋がる音が欲しい」という理由でGの5thのレの音を半音上げてaugコード化します。これによってベースのレ♭とGの5thだったレの音が半音でぶつかることも回避できました。このような手順でBlackadderChordが発生しました(下譜)。

 「Dm/F→Gaug/D♭」でベースがちょっと変わった動きをすることになりますが、Dm/Fの方は29小節目の「Gmaj7からベースがFまで半音ずつ下がってきた」というのと30小節目の「Dm(ウワモノ)のルートからCまで半音ずつ下がってきた」という2つの流れができています。Dm/Fはその2つの流れを繋ぐ存在になっているのでそこまで違和感はないかなと思います……。違和感があっても殴らないでください。

 いつもコード進行の話をしているくせに、曲を作る時は実はあまりコード進行を意識しているわけではありません。メロディを先に作ってそれに合う和音を見つけるという形で作っているので、コードネームも後付けです。そのため、既にお気付きの方もいらっしゃると思いますが、この記事に貼り付けている楽譜と動画で表示される楽譜とでは何箇所かコードネームが異なっています。こちらの記事の方が訂正版です。31小節目のD♯aug7もどのようなコードネームで表記すべきか悩んだところです。判ればいいやと適当に付けました……。というのも、この和音の成り立ちを考えるとコードネームは下譜のようになり、なんかごちゃごちゃしていて見にくいなと思ったからです。

 Cmaj7→B7→Em7だと素直で良いですが、私は素直になれないお年頃なので、まずB7をBaugにします。おしゃれだからです。そしてベースをEm7のミの音にスムーズに繋げるために転回します。さらに、Cmaj7からの「ド→ド♯→レ」の流れを作るためにド♯(9th)の音を足します。このようにして元気な和音が生まれました。

 そしてEm7からは強進行を繰り返してGに解決するのですが、その過程でA7→Am7という進行が登場します。Em7→A7→D7→Gでもいいのですが、ドミナントセブンスコードが連続するとちょっとクセが強すぎるのでA7をマイナーコードにしてからツーファイブワンという進行にしました。ですが、ここでA7→Am7となることで、ベースが動かないのは個人的にちょっと気になります。2拍ずつで強進行(ベースを4度上行)するという流れを崩したくないからです。結局この流れは崩さないといけなくなるのですが、せめてベースがAに留まるのは嫌だということで、32小節目の4拍目あたりからベースをEにしてそこからAm7に進むようにしました。なので実際にはA7→A7/E→Am7という進行になっています。

35~43小節目(A)


 そして原点回帰のイメージでAセクションに戻ってきます。ですが、全く同じだとつまらないので、少し変化を持たせました。ちょっとわかりにくいのですが、3小節目のAm6だったところをAdim7にしました。5thが半音下に下がっただけですが後者の方がクセが強い感じがして終わりに向かってる感がありませんか? 他は何も変わっていませんが、コピペはしないで打ち込み直しました。


 ありがちですが、40小節目でメロディの端っこを伸ばして42小節目でオルゴールみたいに可愛らしい感じで終わります。ココアを飲み終わって、「おやすみなさい」のイメージです。え? 歯磨きはしないのかだって? しますけど何か?(急に喧嘩腰)

 43小節目の全休符は確実に取って欲しい余韻の分です。眠りについて暗闇と静寂に包まれているイメージです。

さいごに



 くぅ〜疲れましたw これにて完結です!

 なんか偉そうにいろいろと曲に対する自分のイメージを書いてきたのですが、この曲を聴いて何をイメージするかは皆さんにお任せします(くぅ疲回避) この曲を聴いて皆さんが少しでもホッとした気持ちになったのなら幸いです。ホットだけに(激寒)
 以下、さまよいちゃん達のみんなへのメッセジをどぞ(復活のくぅ疲)

さまよい「みんな、読んでくれてありがとう
ちょっといい加減なところも見えちゃったけど・・・気にしないでね!」

さまよい姉「いやーありがと!
私のこの曲に対する愛は二十分に伝わったかな?」

さまよい友人「読んでくれたのは嬉しいけどちょっと恥ずかしいわね・・・」

さまよい担任「読んでくれありがとな!
正直、文中で言った私のこだわりは本当だよ!」

ファサ「・・・ファサ」ファサ

では、

さまよい、姉、友人、担任、俺「皆さんありがとうございました!」
ファサ「ファサ・・・!」



さまよい、姉、友人、担任「って、なんで俺くんが!?
ファサ「・・・ファサ!?
改めまして、ありがとうございました!」

本当の本当に終わり